AIによるコード生成が当たり前になりつつある今、プログラマーの役割は大きく揺らいでいます。Prahlad Yeri氏のブログ記事「I am a programmer, not a rubber-stamp that approves Copilot generated code(私はプログラマーであって、Copilotが生成したコードを承認するだけのゴム印ではない)」は、そんな開発者が抱いている違和感を解説し注目を集めています。
筆者は、最近Redditで話題となった「Completely losing interest in the career due to AI and AI-pilled people(AIとAI信者のせいでキャリアに興味を失った)」という投稿を例にとり、投稿者がわずか2ヶ月で「一生続けたい仕事」から「転職すべきかも?」という心境に変わった背景には、AIツールの強制使用と、それに伴う職場環境の変化があると指摘しています。
IT企業では、CopilotやChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)を使うことが、もはや「推奨」ではなく「義務」になりつつあり、使用状況が監視され、評価指標にも組み込まれてしまうという状態になっています。従来のバグ修正数やコードレビューなどの指標に加え、「AIをどれだけ使ったか」が評価対象になっているのです。
これにより、プログラマーの役割は「コードの創造」から「LLMが生成したコードを承認」するだけの「ゴム印」的存在に変わっています。とはいえ、責任は人間のプログラマーにあり、バグが出れば、解雇されるのはAIではなく人間であることに変わりはありません。「AIが仕事を奪う」という見出しの裏で、実際には人間がAIのミスの責任を取らされているのです。
同氏は、プログラミングは単なる作業ではなく、創造的なクラフト(技術芸術)で、AIは補助的なツールとして強制されるべきものではないと主張しています。成果物が良ければ、AIを使ったかどうかは本来問題にならないはずだと強調しています。
Hacker Newsでの議論:受容 vs 抵抗
このブログ記事はHacker Newsでも大きな反響を呼び、200件以上のコメントが寄せられています。議論は大きく二つの陣営に分かれています。
肯定派:AIは進化の一部
肯定派は、AIを技術の自然な進化と捉え、効率化や民主化の側面を評価しています。
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「AIはIDEやStack Overflowの延長線上にあるツールでしかない。騒ぎすぎだ」
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「退屈な作業をAIに任せて、人間は設計や創造に集中すべき」
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「一般人が機能的なコードを書けるようになったのは、むしろ歓迎すべきこと」
懸念派:職業の空洞化と責任の不均衡
懸念派は、職業的アイデンティティの喪失や、責任の所在が曖昧になることへの不安を強く訴えています。
- 「AIが書いたコードのバグで人間が責任を取るのは理不尽」
- 「コードを書くことが承認作業になるなら、プログラマーの誇りが失われる」
- 「AI使用の強制は、技術者の自律性を損なう」
終わりに
AIによって技術職のアイデンティティが問い直されているなか、この記事は、「自分の仕事がどう変わるのか」「どこまでAIに任せるべきか」「便利さの裏で何を手放しているのか」を考えるきっかけとなるかもしれません。