
AIコーディング支援は「生産性が10倍になる」「使わない開発者は取り残される」といった強烈な宣伝文句とともに広まってきました。しかし、AIコーディングを推進してきた Anthropicが公開した最新の研究結果は 「AI支援は開発速度をほとんど向上させず、むしろコード理解やデバッグ能力を損なう」と結論づけたのです(Anthropic)。
公開された論文「How AI Impacts Skill Formation」は、AI支援の存在が、AI を適切に監督するために必要なスキルの発達にどのような影響を与えるのかを明らかにするものです。開発者が新しい非同期プログラミングライブラリをAIあり/なしの条件で習得する過程を調べ、AIの使用は 概念理解、コード読解、デバッグ能力を低下させる一方で、平均すると有意な効率向上をもたらさないことがわかったとしています。コーディング作業を完全にAIに委任した参加者は、多少の生産性向上を示したものの、ライブラリの学習を犠牲にしていたとのことです。
AIの支援を受けながらも学習成果を維持できる開発者は存在したものの、AIによる生産性向上は能力への近道ではないことを示しています。安全性が重要な領域では、スキル形成を損なわないよう、AI支援を慎重にワークフローへ組み込む必要があると結論づけています。
スキルは「使わなければ衰える」
Redditのスレッドでは、開発者たちが自身の経験を交えながらこの論文に関する議論を展開しています。
全体にAIに頼るほど、「自力で考える力が落ちていく」という声が多く、一度AI依存に慣れると、元の思考プロセスに戻れなくなるという指摘もあります。一度習得したスキルも使わなければ衰えていくという事実が重く受け止められています。
AI開発はコードを理解しないまま進めるため、後で巨大な負債として返ってくるという意見もあり、AIを「Stack Overflowの高速版」として使うのが最適だと指摘するユーザーも存在します。
また、AIの影響は経験者と初心者で異なり、熟練者が補助的に使えば生産性が向上するものの、初心者が使うと基礎的なスキルが身につかず、「業界全体のレベル低下を招く」との懸念も寄せられています。
研究が示す「正しいAIとの付き合い方」
Anthropicの論文では、AIを使いながらも高い理解度を保った開発者の特徴として、概念的な質問を投げる、AIに丸投げせず、自分で考える部分を残す、コードの意図を理解しようとするといった能動的な使い方が挙げられています。
AIは「代わりに書くもの」ではなく「理解を助けるツール」として使うべき ということです。
まとめ: AI時代の開発者に求められる姿勢
今回の研究は、AIは強力であるものの、使い方には注意が必要であることを示しています。初心者は、学習プロセスそのものが失われる危険性があり、経験者でも、丸投げは理解力を損なうおそれがあるからです。
AIツールが発展していくなか、開発者自身の思考力をどう維持するかが、これからの時代の重要なテーマになりそうです。
