2025年8月、Windows 11のアップデート「KB5063878」および「KB5062660」が一部SSDを"文鎮化"させたという報告がSNSやRedditで拡散されました。特にPhison製のDRAMレスSSDが標的となり、ユーザーの不安を煽る形で話題となっています。
しかし、Phisonはこの件に対して4,500時間以上の検証テストを実施し、問題の再現には至らなかったと公式に発表しました(wccftech)。
Phisonは今回、報告が事実であるかどうかを検証するために自らテストに取り組み、影響を受ける可能性があると報告されたSSDで、累積4,500時間以上をかけ、2,200回以上のテストサイクルを実施したものの、障害は一切再現されなかったと説明しています。パートナー企業や顧客からの報告もないとのことです。
Phisonは次のようなメッセージを公開しています。
As stated on August 18, Phison was made aware of the 'KB5063878' and ‘KB5062660’ updates on Windows 11 that potentially impacted several storage devices, including some supported by Phison. In response, Phison dedicated over 4,500 cumulative testing hours to the drives reported as potentially impacted and conducted more than 2,200 test cycles. We were unable to reproduce the reported issue, and no partners or customers have reported that the issue affected their drives at this time.
Phisonは、Windows 11のアップデート「KB5063878」および「KB5062660」が一部のストレージデバイスに影響を与える可能性があるという報告を受け、これらのアップデートに対応するPhison製品も含めて調査を開始しました。これを受けて、Phisonは影響が疑われるドライブに対して累計4,500時間以上の検証テストと2,200回以上のテストサイクルを実施しました。その結果、報告された問題を再現することはできず、現時点でパートナー企業や顧客からも障害の報告は受けていません。
Phison remains committed to the highest standards of reliability and continues to closely monitor the situation in collaboration with our industry partners.
Phisonは今後も高い信頼性基準を維持しつつ、業界パートナーと連携して状況を継続的に監視していきます。
Best Practices for End Users
While our validation testing has not identified any concerns related to these Windows 11 updates, we have shared industry best practices to support high-performance storage devices. We continue to advise users that for extended workloads, such as transferring large files or decompressing large archives, make sure a proper heatsink or thermal pad is used with the storage device. This helps maintain optimal operating temperatures, reduces the likelihood of thermal throttling, and ensures sustained performance.エンドユーザー向けのベストプラクティス
Phisonの検証では、今回のWindows 11アップデートに関連する懸念は確認されませんでしたが、高性能ストレージデバイスの安定運用を支える業界標準のベストプラクティスを共有しています。特に以下のような高負荷作業(例:大容量ファイルの転送、大規模なアーカイブの展開)を行う際には、ストレージデバイスに適切なヒートシンクやサーマルパッドを使用することを推奨します。これにより、最適な動作温度を維持し、サーマルスロットリング(熱による性能低下)の可能性を減らし、安定したパフォーマンスを確保できます。
Phisonは、ユーザー向けのベストプラクティスとして、大容量ファイルの転送などの高負荷作業を行う際、ストレージデバイスに適切なヒートシンクやサーマルパッドを使用することを推奨しています。最適な動作温度を維持することで、サーマルスロットリングの可能性を減らすことができるからです。
Hacker Newsでの技術的議論:DRAMレスSSDの設計的限界?
このPhisonの検証結果を受けて、Hacker Newsでは以下のような技術的な議論が展開されました。
論点 | 内容 |
---|---|
HMB(Host Memory Buffer) | DRAMレスSSDはFTL(Flash Translation Layer)情報をホストRAMに依存する。OSがRAM領域を破損するとSSDが文鎮化する可能性もある。 |
DMAアクセス | SSDコントローラがPCIe経由でRAMにアクセスする設計が、予期せぬ破損を招く可能性。 |
設計批判 | 「(DRAMレスSSDが)$5安いからといって、脆弱な設計を選ぶべきではない」との声も。 |
懐疑論 | RedditやYouTubeの報告は「循環的な引用」にすぎず、技術的根拠が乏しいとの指摘も。 |
まとめ:憶測よりも検証を
今回の騒動の原因は未だにはっきりとしていません。しかし、Phisonの検証結果は、少なくとも同社製品に関しては「問題なし」とする強力な反証となっています。ユーザーは障害を恐れすぎることなく、最新情報をチェックしていくことが望ましいと思われます。