2025年9月22日、GNU Coreutils 9.8が正式にリリースされました(Phoronix)。GNU Coreutilsは、UNIX系システムの基盤を支えるツールで、今回のアップデートではバグ修正と新機能の両面で大きな変更が行われています。
新バージョンでは、多くのコマンドで長年放置されていた挙動の不具合が修正され、より予測可能で安定した動作が保証されるようになっています。
-
cp --sparse=always
:ゼロデータの穴(hole)を正しく作成できるよう改善 -
tail -n NUM
:ファイルが成長する際に、指定行数以上を出力してしまう問題を修正 -
od
:巨大な幅指定(例:3037000500)に対して正しく診断を出すように -
fold
:極端に大きな--width
指定でメモリを使い果たす問題を解消 -
tty
:TTY判定の失敗時に、より明確なステータスコードと診断を出力
エンコーディングやハードウェア対応、ロケール対応など、幅広いユースケースに対応する新機能も追加されています。
-
basenc
:視認性の高いBase58エンコーディングに対応 -
cksum -a
:SHA2およびSHA3アルゴリズムを統一的に扱えるように -
date
:イラン暦(fa_IR)、エチオピア暦(am_ET)、タイ暦(th_TH.UTF-8)に対応 -
fold
:マルチバイト文字の幅を考慮した折り返し処理に対応。--characters
オプションも追加 -
nproc
:cgroup v2のCPUクォータを考慮して、より正確なプロセッサ数を返すように -
stty
:任意のボーレート設定に対応(Linux/glibc 2.42以降、Hurd、BSDなど)
readlink
やrealpath
の標準仕様への準拠も進み、スクリプトやツールチェーンとの互換性が向上しています。また、factorの高速化や、seqの正確性の向上、foldのエラー対応の改良なども行われています。
このリリースは、単なるバグ修正にとどまらず、現代的なユースケース(マルチバイト文字、ハードウェアアクセラレーション、国際化)に対応するための基盤強化が随所に見られます。特に、cksumやfold の改善は、日常的なスクリプト処理やログ解析において、信頼性と柔軟性を大きく向上させることが期待されます。変更点の詳細はGNU Coreutilsの公式NEWSファイルで確認可能です。